俺#

新潟市でIT業を営むおっさんのブログ。

WILLCOM、今回の倒産の引き金と今後の展望

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100218_349824.html
http://journal.mycom.co.jp/articles/2010/02/18/willcom/
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1002/18/news086.html
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/news/20100218/1023067/

イーモバイルの本格的な普及」と「XGP免許の付与」。この2つの事象が同時に訪れた事は本当に致命的だった。

本来、WILLCOMのデータ通信サービスは、イーモバイルが登場した時点で価格を前面に押し出す作戦に転換しなければならなかった。速度で勝てないなら、価格で勝負するしかない。例えば「基本料0円、上限2,480円」なら、400kbpsでも勝負になると思う。さらにtypeAGのような新しい技術の開発を推進していれば、実効速度も向上したのは間違いない。遅いなりにも進化があれば、サービスへの印象も違ったものになっただろう。

しかし、そのような「WILLCOMらしい展開」はなかった。XGPの免許が付与され、良くも悪くもXGPにかける以外の選択肢がなくなったからだ。XGP展開の原資を現行サービスに頼る計画のため、現行サービスで極端な価格攻勢をかける事はできず、新たな投資もXGPに集中せざるを得ない。その結果、割高のまま全く進化しないデータ通信サービスは壊滅。比較的好調な音声サービスに傾倒した展開を行うものの、データの大きな穴を埋め合わせるには至らなかった。

事実ここ1年の現行PHSサービスの停滞ぶりは悲しくなるほどで、安易なスペシャルモデルの乱発に終始する様は目を覆うばかりだった。しかし、これは無能ゆえの無策ではなく、策を打てるだけの体力がなかったということだ。もしXGPの免許が付与されていなければ、速度のハンディを背負うデータ通信サービスも万策尽くして守り続けただろう。「相変わらず小粒なPHSキャリアのクセに(失礼(^^;)調子の良いWILLCOM」がそこにあった可能性は低くない。

では、もしXGP免許の付与が1年早かったら?XGPは無事にサービスインを迎えたと思う。しかし、データ通信の需要は音声と比較すれば微々たるもので、好調のイーモバイルですら無料でPCをバラ蒔いて保っている市場だ。XGPには速度面やエリア展開コストで優位性があるとはいえ、それだけでWILLCOMイーモバイルと渡り合えただろうか?そもそも、WILLCOM単体でXGPを展開する事は少し無理があった気もする。

今後だが、XGP事業が分離されるか否かで大きく流れが変わってくるだろう。

現行PHSXGPが事業的に分離される場合、噂どおりXGPソフトバンクが「持っていく」ことになろう。3Gサービスで帯域不足に悩むソフトバンクが、PC向けデータ通信インフラを補完するためにXGPを積極展開するとしたら、それなりにうまく事が運ぶと期待できる。WILLCOMは音声を軸に立て直すことになるが、XGPPHSの既存インフラを前提とした技術である以上*1WILLCOMも何らかの形で関わり続ける可能性はある。もちろん、PHSデータ通信も価格を武器に継続されるだろう。

XGPを分離せず現行PHSソフトバンクがお持ち帰りになる場合、結局ユーザーを3Gに巻取られてPHSサービス終了という最悪のシナリオも想定内となる。1年も経たずして「ローカル規格はダメだ云々」と難癖をつけXGPから撤退し、お約束の1万円キャッシュバックをエサにPHSユーザーの移行を促進。2年もすればPHS停波みたいな(笑。いや笑い事ではないのだが、あのソフトバンクのことだ。「ユーザーの半分も巻き取れればしめたもの」と今頃ニヤニヤしていたりして。

実際にはソフトバンクの出資比率が参入制限で1/3になるハズで単純な話ではないし、ソフトバンクも立派な通信事業者。このご時勢にリスクを負って支援するからには、既に技術が確立しているXGPと全国16万基地局のインフラをフイにはしないと期待したい。また、ソフトバンクの狙いがWILLCOM CORE 3Gだという見方もあるが、ドコモがソフトバンクに回線を貸し続ける事はないだろう。そもそもCORE 3GはXGPのエリアが拡充するまでの限定サービスで、XGPが展開されないならその前提も崩れてしまう*2

いずれにせよ、ユーザーに出来ることは、いつも通り普通に使い続ける事だけ。定額データ通信と音声定額サービスで2度復活してきたWILLCOMの、3度目の復活劇を期待して待ちましょう。

*1:XGPのインフラをゼロから構築することももちろん可能だが、ソフトバンクにそれが出来るかといったら出来ないんじゃないだろうか。

*2:その意味ではXGPを失ったWILLCOMがドコモ回線を借り続けられるのかも微妙だが、だからこそ社長曰く「NTTドコモにお願いする」という事なのかもしれない。