俺#

新潟市でIT業を営むおっさんのブログ。

初代「ブルーバードシルフィ」レビュー

http://history.nissan.co.jp/SYLPHY/G10/0404/index.html

NV350の納車まで、代車として初代ブルーバードシルフィをお借りした。納車の時期は「年内は間に合うと思うけど」だそうで、あと1カ月は乗ることになるんじゃないかな。今更G10型シルフィを中古で好んで買うって人はそうそう居ないだろーし、仮に選ばれた場合も「動けば何でもいい」のだとは思うが、せっかく結構な距離を乗ってるのでレビューしてみる(^^;。後期型の18Vi-4(1.8L、4速AT、4WD)、スタッドレス装着、走行距離4万7千キロ。


この車、最終型サニー(B15型)をベースに仕立てた「少し上級」なセダンだ。上級とはいえ、ホイールベースはサニーと同じで「ブルーバード」とは名ばかりの小さな車である。同じ「MSプラットフォーム」を採用する車に、最終型プリメーラ(P12型)、初代「FF」セレナ(C24型)、初代エクストレイル(T30型)など。発売開始は、日産が経営危機に陥ってルノーの傘下になった翌年の2000年で、良い意味でも悪い意味でも「古い日産の匂い」がプンプンする車である。

まず良い点。「この瞬間が日産車」ってヤツが健在で、割と真っ当に走る。オッサン仕様なのでロールは大きいんだけど、その後はリアがしっかり踏ん張るのでイメージ以上にハイペースでコーナリングできちゃう。2代目セフィーロ(A32型)も似たような味だったし(もちろん全体的にセフィーロの方が格上だったけど)、2代目マーチ(K11型)がベースの初代キューブ(Z10型)もそうだった。「901計画」の名残みたいなものであろう。シートがマトモなのも有難い。エンジンもパンチはないがサウンドは悪くない。

次に悪い点。後席が狭い!シワ寄せが運転席にもきていて、着座位置が中途半端に高く落ち着かない。これ、仮に低く設定したら前席の位置が後ろにずれてリアの足元空間が確保できないんじゃないかな。あと、やはり内装が安っぽい。いちおう「少し上級」なので「シート地とか頑張ってるんだなー」と思うけど、メーターフードの素材や色は「商用車?」みたいなチグハグ感があるし、木目調パネルもあからさまなプラスチック。まぁ「安い車だから」といえばそれまでだけども。

マーチ、キューブ、シルフィは、いずれも次の世代で新しい「Bプラットフォーム」ベースになり、そのメカミニマムな近代的パッケージングにより桁違いの空間効率を手に入れて一気に垢抜ける。その一方で走りにはまとまりがなくなってしまい、特にリアの踏ん張りのなさにはたまげたものだ。今でこそ総重量2トンのNV200まで対応できる車台に進化し、ジュークなど「走り」が評価される車種も登場しているが、最初期の車は軒並み「これが『走りだけはトヨダに負けない』ハズだった日産の車?」てな感じだった。

空間効率と言えば最終型セドグロも後席が非常に狭く「何考えてんだ!」と思ったが、古い設計*1の車台のままデザインを丸くしたり衝突安全性を確保しようとしたら、車内が狭くなるのは当然だよね。その直後、V型エンジン前提の先進的な「FM(フロントミッドシップ)プラットフォーム」が登場したが、この車台は現在でもラダーフレームの大型SUVを省いた日産・インフィニティの全てのFR車が採用している*2のはご存知の通り。

要するに何が言いたいかと言うと、G10型シルフィは「時代が1つ前の車」なんだよって事ですな。「完全にルノー前の日産車」なのであります。なので、そこそこ真っ当に走るって部分を「古き良き日産車だ!」と前向きに感じられる人なら割と不満なく乗れるだろうし、垢抜けないパッケージングや内装を「古臭いわぁ」と感じるなら、Bプラットフォームの3代目マーチや初代ノートを選ぶ方が幸せになれるんじゃないだろうか。

小型〜中型車の全てに適用されるハズだったMSプラットフォームや、エルグランドでも採用する予定だったセドグロのFRプラットフォームは、ルノー傘下になって早々に廃止となった。そして、その完成度に目を瞑りながらも、現代的なBプラットフォームやFMプラットフォームを早急に展開し育て上げるというカルロス・ゴーンの手法は、長い目で見ればやはり良かったんだろうな...と、古臭いシルフィに乗りながらしみじみ思った次第。

そうそう、現在の所実燃費は11.7km/L(満タン法)で、4WDかつスタッドレスとしてはまずまずではなかろうか。2WDなら13km/Lくらい行く気がする。

*1:とはいっても、最終型セドグロが初採用の車台だから「古く」はないんだけども。設計「思想」が古い、というのが正解かもしれない。

*2:おっと、モノコックながらラダーフレーム的な構造を持つ商用車NV350キャラバンも例外だった。