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#日産 #サクラ を注文した話(その1)。最近のBEVはどのように進化しているのか? #EV #BEV #電気自動車 #nissan #sakura

BEV(バッテリーEV。ハイブリッド等の電動車と区別するためBを付ける。)というと日産「リーフ」や新興メーカーのテスラが先駆者と思われがちだが、2006年登場の三菱「アイミーブ」が初の一般向け量産BEVである。さらに時代を遡るとリーフのご先祖様にあたる「たま電気自動車」もあるが、そこからアイミーブまでは60年のブランクがあるので別枠で扱うのが妥当だろう。

さて、BEVは環境性能・走行性能・快適性能において評価が高い一方で、航続可能距離が短い、充電に時間がかかる、バッテリーがすぐヘタる、価格が高い、実は環境負荷が低くない、といったネガティブなイメージも根強い。最近のBEVはどのように進化しているのか?アイミーブとの比較や充電インフラの話を絡めて整理してみたい。


電費と航続可能距離

まずkWh辺りの走行可能距離(=電費)。アイミーブの航続可能距離は世代により差があるが、電池容量16.0kWhのモデルで180km(JC08モード)。最新の日産「サクラ」/三菱「ekクロスEV」はバッテリー容量20.0kWhで180km(WTLCモード)。測定モードが異なるので、WTLCからJC08の換算を「ザックリ7掛け」で行いWTLCベースで電費を算出すると、

 サクラ 180÷20=9.0km/kWh
 アイミーブ 180×0.7÷16=7.9km/kWh

となる。16年かけて改善した結果と考えると少し期待外れ。しかし、電気モーターは元々エネルギー効率が90%を超えているため改善の余地がない。今も昔もBEVの電費はほとんど重量や空気抵抗で決まるということだ。内燃機関は?といえば、例えば日産エクストレイルの「e-power用のVCターボエンジン(発電に特化したバージョン)」が遂に熱効率50%を達成して話題になったというレベル。内燃機関の車よりBEVの方が走行距離当たりのエネルギーコストが圧倒的に低い大きな理由である。

いずれにしても、BEVにおける航続可能距離はバッテリーを沢山積んだものが勝ちとなる。例えばテスラの「モデル3」の78.4kWhのモデルで689km、日産アリアの66kWhのモデルで470kmといった感じ。バッテリーを載せるほどに重くなり電費は悪化するが、それを押し切る大容量バッテリーを搭載しながら現実的な価格で販売できるようになったのは大きな進歩だろう。

(とはいえ航続可能距離が689kmで足りるか?と問われれば「足りません」。ウチの使い方だと日帰り往復600km超がザラなので、後述の様に出かけた先での充電がまだ実用に耐えない以上、最低でも800kmは欲しい。)

充電インフラと所要時間

出先での充電は、所要時間を考えると急速充電が基本になる。急速充電器の出力は30kW~90kW。規格としては150kWまであるがまだ限定的で、車両側も大容量のバッテリーを積んだ上級クラスでないと入力が30~60kWの対応だったりする(車両側の入力の上限はおおよそバッテリー容量と比例する)。普及価格帯の車種では、だいたい30分の充電で60~80%回復というのが目安となる。この30分をどう見るかだが、

「先客がいたら1時間。3人待ちなら2時間。それでいて回復する航続可能距離が200km程度。有り得ないね!」

というのが正直なところ。この問題を解決するためには、車両と充電器両方の性能向上はもちろん、電力供給インフラの強化も必要なので短期間での改善は難しそうだ。現状の性能でも高速SA/PAに各十数本というレベルで充電器が装備されれば運用に耐えるだろうか。200km毎に30分+αのインターバルを要するハンデは小さくないが、それを織り込むのが前提となるだろう。(ちなみに、各社が提供する料金プランが驚くほどウ○チだった。ゲスト利用の面倒くささ加減にも驚く。これは別途グチりたいと思う。)

なお、走行直後に急速充電した際に「バッテリー温度が高くて期待通り充電できない」という問題は、バッテリー冷却機構のある車両ではほぼ回避できるようになっているようだ。これは安心材料となる。

家庭用の単相200Vで充電した場合、20kWhのバッテリーをお腹いっぱいにするのに8時間を要する。40kWhなら16時間。80kWhなら32時間。これ16年前から変わっていないし今後も変わらない。蛇口が変わらないので変わりようがない。とはいえ、多くの場面で寝てる間に前日の消費分は回復できるのではないだろうか。現時点では、航続可能距離に関わらず自宅充電をメインに運用するのがベストチョイスと言えそうだ。

走行バッテリーの実用寿命

目に見えて大きく改善した部分。初代リーフでは車両寿命に対して明らかにバッテリーのヘタりが早いが(中古の初代リーフは航続可能距離50km未満となった個体が多い)、現行型ではほぼ問題となっていない。極端なケースで「3年15万キロでバッテリーがイカれた。急速充電しすぎだと言われた。」というのがあったが、5万キロ/年という超が付く過走行の個体で15万キロ使えたら御の字ではないか。

バッテリー冷却機構がない(BEVとして少しばかり時代遅れになりつつある)現行のリーフにおいてもこの進化ぶりなので、例えばバッテリー冷却機構が付いている最新のサクラ/ekクロスEVでバッテリーのヘタりを気にする必要はほとんどないと考えてよいだろう。サクラ/ekクロスEVの場合、バッテリーについて8年10万キロの保証もある。

価格

BEVでは大げさでなく、車両価格の半分くらいはバッテリーのコストだ。バッテリーが安くなれば車両価格が下がる。アイミーブの場合、2006~2019年の13年間で価格が以下の様に変遷した。

 16kWhモデル:460万円
 10kWhモデル:未設定
  ↓
 16kWhモデル:380万円
 10kWhモデル:260万円(6KWhあたり120万の計算)
  ↓
 16kWhモデル:290万円
 10kWhモデル:230万円(6KWhあたり60万の計算)
  ↓
 16kWhモデル:300万円
 10kWhモデル:廃止

消費増税の分は値上げされているが、この間にバッテリー価格が相当下がったことが判る。そして、2022年登場のサクラ/ekクロスEVは

 20kWhモデル:230万円~

となった。ガソリンモデルと比較したらまだ高いが、アイミーブからの流れで見ると「さらに安くなった」と言える。バッテリーはリーフ譲り、車台はデイズ/eK譲り、モーターはノート譲りなのもコスト面で有利だろう。電動化に余念がない日産とアイミーブの経験を持つ三菱の合弁だからこそ実現した価格は、いわゆる戦略価格ではなく利益もしっかり出るそうだ。

今後さらなる量産とコストダウンの正のスパイラルに入れるか?補助金漬けにしてでも、そこまでもっていくのが重要。それが出来なければ国産車が中国製のBEVに駆逐される未来が現実になってしまいそうだ。

環境負荷

微妙である。バッテリーの製造と廃棄におけるCO2排出量は少なくない。ただし「現時点では」。

例えば太陽光パネルの場合でも『パネルの生産時に環境負荷があるので20年使ってようやくプラスになる。しかし廃棄を行ったら最終的に火力発電よりも環境負荷が高い。』といった試算があったりする。では、本当に太陽光パネルを作れば作るほど悪い方に進むのかといえば、それもちょっと違う。

この手の試算は電力を現時点での発電方法で得る前提で行われるので、ニワトリと卵みたいな側面がある。火力発電で得られた電力で太陽光パネルを生産すると環境負荷は確かに高い。しかし、稼働する太陽光パネルが増えていくと、パネルの生産や廃棄に使う電力は徐々に太陽光発電によって賄われるようになる。最終的には火力発電のままで行くより環境負荷が下がる訳だ。

電気の良い所は、どんな手段で発電しても同じ電気なので使い方が変わらないという点。内燃機関の車は基本的に原油でしか走らないが、BEVは原油でも石炭でもガスでも太陽光でも地熱でも風力でも原子力でも走るので、エネルギー事情がどう変化しても対応できる。例えば「CO2の9割を回収できる石炭発電所」が実証段階を終えてCO2のリサイクルを考える段階に来ているが、技術革新で発電における環境負荷が下ると、BEVの環境負荷も自動的に下がるのである。

発送電を含めた電力グリッド全体をどう変化させるべきかを考える上で、効率が高く蓄電機能も併せ持つBEVの普及は重要な要素の1つでもある。前述のように電気モーターのエネルギー効率は内燃機関より圧倒的に高い。発電~送電~充電におけるロスに加えて重いバッテリーを載せていてもなお、内燃機関の車よりBEVのほうが走行距離当たりのエネルギーコストが低いというのは見逃してはならない部分だ。

内燃機関をクリーンに動かせる代替燃料にも期待したいところだが、生産量やコストが理由で航空機・船舶・大型車などに限定されていくというのが現時点での予想である。仮に大量に格安で生産できたとして、内燃機関で車を走らせるより発電所で発電してBEVを走らせた方が環境負荷が低い、となるかもしれない。)

いやはや。本題の「サクラを注文した話」にたどり着かなかった。続きはまた今度。納車はまだまだ先である。