「日産」という枠を取っ払った今回の車選びは、「308SW」という答えにたどり着くまでに多くの車種を比較検討することになった。なかなかに楽しんだので、検討した順に感じたままを記録しておく。
シトロエン ベルランゴ(試乗)
シトロエンから特別仕様車「ベルランゴトリコ」が登場! 白・青・緑の3色のボディカラーでフランス車らしさを演出 | 自動車情報・ニュース WEB CARTOP
商用ベースの乗用バン。プジョーとフィアットにも兄弟車が存在し、それぞれデザインや味付けが結構異なるのが面白い。個人的に好みなのはベルランゴ。ちなみに試乗したのは随分前だ。ライバルのカングーはまだモデルチェンジ前で、当時のカングー比で「こりゃ大きい!」という印象だった。
商用の香りが残る乗り味だが真っ当な走り。内外装にも高級感はないが、それで良しと納得させるポップな演出が素晴らしい。積載性は問題なし。惜しいのがリアシートで、3座均等割当なのはともかく背もたれが絶壁。路線バスじゃないんだから、もう少しゆったり座れる角度にならないものか。他が全て良いだけに残念。
(追記。リアシートが絶壁と言ったが、今思えば角度的には308SWと大きな差ではなかったかもしれない。同じ位の角度の308SWが「良し!」となったのは、幅に余裕があるのとシートそのものの質が高いからかな。)
スズキ エブリイ・ワゴン(未試乗)
いつも愛車候補として頭の片隅に在り続ける、貴重な軽キャブオーバー乗用車。普通に4人乗れるし荷物も積めるし4WDも選べるしで実用性は折り紙付き。走りや快適性で弱点を抱えるが、トランスミッションが4ATからCVTに変更されたので許容範囲に進化したと勝手に期待。
妻ちゃん曰く「サクラの代わりならこれも有り」。それ、私も期待してる。しかし最初のBEV版はダイハツOEMが予定されていて、今のところ乗用版がない。サクラを乗り換えるタイミングで合致する仕様が出て来るかどうか。なんにしても乗るチャンスが巡って来るまで、末永く続いて欲しいジャンル。
ダイハツ アトレー・バン(先代試乗)
軽トラ&軽バンの王者がフルモデルチェンジ! ダイハツ・ハイゼット&アトレーが「わくわく」のるつぼだった | 自動車情報・ニュース WEB CARTOP
エブリイに先んじてフルモデルチェンジしCVT化したのに、乗用モデルが無くなってしまった。リアシートが使い物にならない。貨物車特有の荷室面積要件があって、貨物車でリクライニング付きのリアシートを設けるならキャラバンクラスの広さが必要になる。BEV版の登場が予告されているが、まずは乗用モデルの復活を期待したいところ。
日産 キャラバン(前期型所有・現行型試乗)
[画像]オーテック、キャラバンの最上級グレード「キャラバン AUTECH」 価格は339万200円から / (1/9) - Car Watch
無敵の積載性。登坂も巡行もイケる大トルク。冬頼もしいパートタイム4WD。走りはトラックだと割り切るしかないが、他にない運転感覚は案外楽しかったりする。同じ車が沢山走っていても、嫌にならない独特の満足感。現行型の新エンジンは静粛性も加速も格段に向上。「もう1回キャラバンか?」という気持ちは相当あった。
ブレーキになったのはADASの欠如と環境性能。10年前なら「頑張ったね!」と思えた燃費も、今見直すと「流石にチョットね...」になる。次世代がもしあるならプロパイロットが付くだろうし、燃費もそれなりに向上するだろう。商用車はロングスパンだから出会うタイミングである。
最大の問題は『短い人生で同じ車を2回買うのは面白くない』ってことだ。
日産 NV200バネット・ワゴン(前期型現車確認)
3番目の画像 - 日産 NV200バネット ワゴン - Webモーターマガジン
登場時点から追ってきた車種。気付けば15年も売り続けているロングセラー。地味な改良は繰り返されているが、どうしても平成感が漂う。海外版はルノーのOEMに切り替わったので次世代は期待できないか?国内では5ナンバー幅が求められるから細々と続くのかもしれない。依然として車体価格優先の局面なら候補になり得るが、できればプロパイロットやe-Powerが欲しいところ。
ルノー カングー(試乗)
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事前調査の段階では「キャラバンをやめるならカングーで決まりじゃない?」というレベルで期待していた車種。積載性は当然ながら十分。ベルランゴよりも乗用寄りの走りで、リアシートも許容できる快適さ。装備面でのネガは助手席シートが少しタイトな事くらいだった。
しかし、何故か惹かれないのである。人生初のインポートカーなのに「心躍る何か」が見つからない。特徴のない走り、無難な外装、内装は地味で質感も高くない。実用車が本来の姿なのは理解するが、ベルランゴのような楽しい車を知っていると物足りない。
ただ、バンの積載性と乗用車に近い乗り味を両立できるという点で、カングー(とベルランゴ3兄弟)は貴重な存在。キャブオーバーでは厳しいという人は国産ミニバンで妥協する前に検討すべきだ。ハイエースやキャラバンに比べたら走りの質感は圧倒的に高く、国産ミニバンより真っ当に走る。
ルノー メガーヌ・スポーツツアラー(未試乗)
ステーションワゴンを選ぶ場合の有力候補だったが、カングーと同時に試乗しようと思ったら終売していた。世代が古い事もあり走りの完成度でライバルに少し遅れを取っていたようだが(各所のレビューによる)、内外装は個人的な好みに合致していたので自分で乗って比べてみたかった。サイズも含めてスペックも丁度良いし、価格もリーズナブルだった。まぁ、値上げラッシュの前に終売しちゃったって話だけど。
マツダ マツダ6ワゴン(未試乗)
マツダ6 ワゴン【1分で読める国産車解説/2022年現行モデル】 - Webモーターマガジン
ステーションワゴンを選ぶ場合の有力候補だったが、少し前に終売となってしまった。統一デザインのSUV群には全く興味が湧かないのだけど(最近のCX-60やCX-80は積極的に格好悪いし)、マツダ6はセダンもワゴンも悪くなかったよね。内装もスバル勢より好み。荷室機能も海外勢に引けを取らない。性能&機能的には何ら問題なく要求を満たしてくれると思われる。サイズはDセグメントだが価格はリーズナブル。実際に買うとなったら全長が長い点で悩んだか?マツダ車は昔のデミオとロードスター以外乗った事が無い気がするので、試乗してみたかったな~。
フォルクスワーゲン ゴルフ・ヴァリアント(試乗)
【VW ゴルフヴァリアント 新型試乗】「もはや別人格」荷室&後席の拡大はマジック?…島崎七生人 | レスポンス(Response.jp)
ステーションワゴンを選ぶ場合の有力候補だったハズなのだが、今回の車探しでは「カングー以外もいろいろ見てみよう」となって再度リサーチするまでド忘れしていた車種。理由はメガーヌや308と比べて地味だから。定番過ぎるのか印象が薄いんだよね。
しかしながら、実車はスマートで格好よく地味とは程遠かった。運転席に座った時の居心地の良さが素晴らしい。リアシートも質が高く広くて快適。ラゲッジも広い。走りも全体的に満足。さすが長年定番と言われ続ける車だ。数少ない残念ポイントは物足りなさを覚えるシンプルな内装だが、安普請ではない。
最終的に後述の308SWとの一騎打ちで惜負となったが、安全性やパッケージングではゴルフに一日の長があって本当に甲乙つけがたかった。結論が出た今でも「堅実な選択はこっちだった」と思っていたりする。死ぬまでに愛車にしてみたい。試乗したら深く心に刻まれた1台。
スバル レガシー・アウトバック(現車確認)
スバルが「レガシィ アウトバック」を一部改良 上質でアクティブな特別仕様車も登場 【ニュース】 - webCG
憧れのスバルのフラッグシップ。伸びやかなステーションワゴンの車体と最低地上高230mmの組み合わせ。もちろん4WD。格好いいし、存在感あるし、冬の事を考えたら最良の選択かもしれない。実際、当地新潟ではスバル車の多さを感じる。
しかしながら立派な全長が問題。ウチの駐車場だと鼻先がギリギリなのだった。多少出っ張った所で誰も文句は言わない土地柄ではあるのだけど(実際出っ張ってるご家庭もある)、大雪の時や妻ちゃんが取り回すことまで考慮に入れると悩むところ。
そこを押し切ってこの車を選ぶとなると、内装が好みでない、1.8Lしかない(調べるまで2.4Lがあるものだと思い込んでた)、CVTしかない、燃費がイマイチ、という辺りで押しが弱いのだった。4WDが必須要件だったら有力候補だったかな。
スバル フォレスター(試乗)
スバル フォレスターの特別仕様車「XT-EDITION」登場 北米用カラーの設定も(Auto Prove) | 自動車情報・ニュース - carview!
基本的にありふれたSUVやミニバンは対象外だったが、妻ちゃんが猛烈プッシュしてきたので折角だし試乗させて頂いた。動向を追っている海外YouTuberの愛車なのだそう。俺は内心「フォレスターならSTI!」と考え始めていた。
試乗した感想は、想像以上に好印象。アクセルレスポンスは素直だし、ハンドリングも良いし、軽快に楽しく走れる。車内空間の実用性も高い。ステーションワゴンと比べると荷室の面積がもう少しあれば良いと思うが高さでカバーできそうだ。
1.8Lよりe-BOXERの方がCVTとのマッチングが良いのは発見だ。凄く良い車だと思った。売れる車には理由がある。流石スバル。ただ、今回の車探しのイメージとは違ったということで見送り。価格帯を考えたら上質感で比べるのは酷だ。STI欲しかったな~。
スバル レヴォーグ・レイバック(試乗)
スバルの新型「レヴォーグ レイバック」プロトタイプに試乗! クローズドの一般道を走った第一印象は? / (3/25) - Car Watch
国産では貴重なCセグメントのステーションワゴン「レヴォーグ」のリフトアップ版。アウトバックも含めてスバルはSUVだと言っているけど、形状的にどちらもステーションワゴンの括りで扱うのが正しいと思っている。
新しい1.8LとCVTの組み合わせは、先代の1.6Lより良くなった。ただe-BOXERのフォレスターに及ばす。静粛性が高く上級感がある。足回りは少しバランスに欠くが優しい。ハンドリングはセンター緩め。踏むとドッカンと速い。この狙いがハマる人には良いと思う。個人的には「普通にレヴォーグ選ぼう」って感じ。
電動シートなど上級装備が奢られる内装は造り込まれていて魅力的ではある。しかし、趣味に合うかどうかと造り込みの度合いは別問題なのが自分用の車選びでは難しい点。シートの質はフロントもリアも物足りない。もう少しコストをかけて欲しい。
試乗後に荷室を確認し、高さが期待値に届かないことが判り見送りとなった。海外勢にある荷室床全体を1段下げる機能がないので、ルーフの低さを補えない。構造的には4WDとのトレードオフ。ここで今回は4WDは諦めようと思い至る。
スバル レヴォーグ(先代試乗・現車確認)
【スバル レヴォーグ 新型試乗】走りは2世代分の進化、燃費は改善の余地あり…丸山誠 | レスポンス(Response.jp)
ステーションワゴンを選ぶ場合の有力候補だった。運転した事があるのは先代の1.6L。そこから想像するに、現行型でも走りはレイバックより好みに近いハズ。2.4Lが選べる点でも興味はあったが、荷室の高さが足りない問題はレイバックと同じなので、試乗は見送り。ライフステージが変化して荷室要件が緩んだら(あるいは次世代で荷室が拡大されたら)、再度チャレンジしてみたい車種ではある。
プジョー 308SW(ハッチバックPHEV試乗・現車確認)
【プジョー 308SW 海外試乗】これが本命!電動化のウラで身悶えさせられるほどの完成度…南陽一浩 | レスポンス(Response.jp)
ステーションワゴンを選ぶ場合の有力候補で、その中でも登場時点から注目していた1台。上級セグメントまで含めて比較しても、相当に目を引く尖った内外装が特徴。車格的にはゴルフとガチンコなのだが、内外装だけで見たらCセグとDセグの中間というイメージ。
サイズが肥大化したクセにリアシートが狭く、背もたれも立ち気味なのが残念ポイント。しかしながら座り心地はゴルフに負けず劣らずで、海外勢のシートへのコダワリを再び実感する。妻ちゃんも「これは我慢できる範囲」という判定。
試乗はハッチバックのPHEVだったが物凄く良かった。100万円上乗せしてPHEVを選びたくなったが踏み止まる。ディーゼルの乗り味は推測するしかないが、各所のレビューを確認する限りゴルフに大きく劣る事は無さそうだ。広いトレッドも良い方向に働くと期待。
最終的にはゴルフとの一騎打ち。大いに悩まされたが、次期愛車としてこの308SWを選ぶことになった。魅力に溢れる内外装が、車幅やリアシートのネガを押し切った形だ。ゴルフには「堅実さ」を感じたが、308SWには「気合い」を感じた。攻めに出た車は強い。
日本ではワゴンの終売が決まってしまったそうで、滑り込みセーフだった。希望の青色が目の前に転がっていた(そのディーラーでラスト1台となる展示車を購入することになった)のも巡り合わせか。もし白や黒しか残っていなかったらゴルフだったかも。
懸念は、1850mmの車幅で取り回しに難儀しそうな点と、FFとはいえ最低地上高が低く雪に弱そうな点。まぁ、以前はFRで同じ位の車高だったスカイラインで雪山に行っていたのだからなんとかなるだろう。どの車を選んでも全てを満たすことはできないからな。
(追記。この文章を書いた後無事に納車され、既に8,000kmほど走ったが308SWを選んで正解だったと思う。ディーゼルモデルでも接地感やコーナリングの安定感はゴルフを凌駕。車幅も出先で駐車場の枠を選び直す事がたま~にある程度。小回りは利くのでキャラバンより楽と思う場面も多い。)
プジョー 408(現車確認)
Peugeot 408 Hybrid review (2023) - TopGear
これはオマケ。308より後に出た、SUVとワゴンとクーペを足して割ったような車。強いて言えばクラウンクロスオーバーやプリウスに近い方向性で、要するに流行最先端のテイスト。外装は308よりさらにアバンギャルド。内装は308とほぼ同じで、価格帯も被る。
全長は308SWより長いがリアが絞り込まれていて、荷室の高さが足らないので候補外。とはいえ308ハッチバックと比べたら広大な荷室だ。なによりリアシートが308より広くて快適。308SWと408が並んでいたら、408を選ぶ人が多いに違いない。
ワゴン人気は低迷している上、ただでさえ出る台数が少ない日本で408とバッティングする308SWが引退するのも致し方ないと思った次第。ウチも「荷室の高さ」の要件が無かったら408を選んでいたかも?FFながら最低地上高が高めなのも冬のことを思えばポイント高い。